mediezzzの日記

幼稚園保育園の制度(お金)についての備忘録、説明原稿

幼稚園の無償化が無駄だっていうけどさ

保育園が何年も前から無償化されているのは知ってるの?
幼稚園が無駄なら、保育園も無駄じゃないの?
保育園はよくて、幼稚園はダメっていうなら、差別や格差推進したいの?


煽りは置いといて。
上記のようなことを考えてほしくて、現状を数字で示します。


元はマイナビニュースで見た記事で。
幼児教育の無償化……本当に必要なの? | マイナビニュース

いろいろと言いたいことはあるんだけど、保護者負担軽減補助金について、少しまとめてみる。

補助金には大まかに運営費補助金と、保護者負担軽減補助金があります。

運営費補助金は、そのまま園の収入となるもの。幼稚園なら経常費といいます。
保護者負担軽減補助金は、園の経理は素通りで、直接親に行くものです。保育園なら保育料請求の時点で差し引き調整されています。幼稚園なら就園奨励費補助金です。

保護者負担軽減とは? 何で分かれてるの?

入る人の収入・補助金の多寡に関わらず、園に入るお金を園児あたり一定にするのは、(たとえ私立幼稚園であっても)税金が投入される公的施設において、保護者の経済状況で選別しないために必要な仕組みです。

だって、
Aさんは収入1000万なので月5万払います
Bさんは生活保護なので無料です
このとき、個人の支払額が園の収入に影響したら、園はAさんしか受け入れなくなりますよね?じゃないと経営成り立ちませんから。

無認可はお金のある人だけの相手ですが、認可を取った時点で私立でも半分公的機関です。
公的機関がこの手の選別をすることは許されていません。

なので、負担軽減補助金によって、「園に入る額は一緒に、保護者の負担は収入に応じて」という状況を確保します。
これが、福祉の応能負担の原則。

実際の運用は

保育園の保育料は、最初からこの補助を差し引いているので、今の保育料一覧表のような収入に応じた保育料になるのです。

一方、幼稚園の補助金は、「幼稚園が個人の収入を確認することができないので」、収入に応じた金額にすることはできません。なので、自治体が後から返金するという「私立幼稚園就園奨励費補助金」というもので調整します。

もしこの補助金がなかったら

保育所:公立・私立関係なく、応能負担の保育料 (最高額で8時間保育の5割負担)
公立幼稚園:公的補助により少ない負担(一律で4時間保育の3割負担)
私立幼稚園:収入に無関係で高負担(一律4時間保育の6割負担)

保育所だと公立私立関係なく応能負担で補助されるのに、公立幼稚園も応能負担以上にしっかり補助されるのに、私立幼稚園だけ応能負担の補助がされないのは差別では?
特に、戦後自治体に余裕がないときに、公立だけではフォローしきれないからと、私立幼稚園・私立保育園を誘致してきた歴史があるのに。

という状況になるので、「私立幼稚園就園奨励費補助金」は、保育所の保育料制度を意識し、負担格差解消を目的とした制度設計になっています。
また、できるだけ差がなくなるように、長年政治活動が行われています。

但し、年収680万(妻が扶養・子ども二人モデル)の年収制限がついています。
これが後で響いてくるので。

兄弟加算

保育園への補助は、女性のキャリア継続等の面と、少子化対策等の面があります。
なので、特に子どもが複数のときの負担を少しでも軽減して、2人目・3人目のハードルを下げるために、保育園には兄弟割引(補助金の兄弟加算)があります。

これがいつからかは遡れませんでしたが、過去10年以上は保育園「同時在園」2人目半額、3人目無料になっています。
認定こども園制度ができてからは、幼稚園保育園こども園混合でも対象だったと思います。

これにあわせて、就園奨励費補助金にも、平成15年より前には同時在園の兄弟加算が始まっています。平成16~20年ぐらいには兄弟の範囲が広がって、最終的には「小3以下で数えて」になりましたし、補助額もだんだん半額相当、無料相当に増えていっています。

平成26年度の幼児教育無償化の話

安倍政権の公約に幼児教育の無償化がありました。
どの程度を以って無償化というかで関係者一同期待していましたが、平成25年6月の報道では、

・将来的には3000億(一人30万円*100万人)の予算をかけて、幼稚園・保育園の年長を(収入に関わらず)無料にすることを目指す。

・その前段階として、私立幼稚園就園奨励費の兄弟加算の部分だけ、年収680万の制限をはずす。つまり、小3以下で数えて3人目なら無償相当(30万補助)にする。そのために予算を+100億の300億にする。

これを幼児教育無償化だということになりました。
 追記:よくある誤解なんですが、
 ×「年長で第3子だと無償」
 ○「第3子なら年齢関係なく無償(300億)、26年から」
 ○「年長なら子どもの人数関係なく無償(3000億)、いつやれるか未定」
 です。2つの話が並行しています。

就園奨励費の拡充は無償化ではないだろうと思うのですが、平成26年度はこれで無償化というそうです。(概算要求で重点項目指定)

収入制限をはずすというのは金持ち優遇だとか思ってしまいますが、あくまで子ども子育て3法で幼稚園を保育園化させるための前段階として、「保育園の兄弟加算に収入制限がないのだから、幼稚園も」程度のものだと思っています。

なので、最初の疑問、幼稚園の無償化がいろいろ言われるのなら、保育園はどうなの?に戻るわけです。

実際にどれぐらい変わるの?

仮定モデル

年収1000万 (幼稚園では今度の無償化まで就園奨励費対象外)
子ども4人 2000年から1年おきに4月に生まれたとする。
(数字が見安いからだけで、実際に2000年生まれの子がこの補助金を受け取れたわけではありません)

兄弟加算の対象としてカウントするのは黄色部分。
・幼稚園は3歳から小3の6年間
・保育園は0歳から就学前の6年間 で同じ6年間です。

保育料は、幼稚園25000円、保育園の以上児が32000円、未満児が64000円とする。

比較対象は
・幼稚園年少入園で、従来の場合
・幼稚園年少入園で、無償化後の場合
・保育園年少入園の場合
・保育園0歳11ヶ月(育休1年+4月入園)の場合
・保育園2ヶ月入園の場合

では比較しましょうか。

幼稚園年少入園で、従来の場合

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年収制限680万から外れるので、補助0です。

幼稚園年少入園で、無償化後の場合

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モデルの例で195万の軽減を受けます。
年収制限がなくなるので、最大限の兄弟加算が入ります。

保育園年少入園の場合

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保育園は同時在園が条件なので、補助の加算額は幼稚園より少なくなります。
モデルの場合57万程度。
ただし、保育園で上だけ預けて、下は3歳までそのまま家でという例は通常認められません。


・保育園0歳11ヶ月(育休1年+4月入園)の場合
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モデルの例で556万の補助金の加算を受けます。
同時在園が条件で、負担が多い下の子が補助を受けるので、金額換算すると大きくなります。

・保育園2ヶ月入園の場合
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育休を取らないモデルです。
モデルの例で716万の補助金の加算を受けます。



3歳入園同士を比較して保育園より幼稚園のほうがというか、
総額でみて保育園の500万以上と幼稚園の200万を比較するか
それは読まれる方にお任せします。

ただ、この保育園の年収制限無し500万と比較して、幼稚園で新たに年収制限を取って200万の給付をしようというのが、「平成26年度幼児教育無償化」の表向きのすべてです。

なお、一番額が多くなるモデルは、最後の子が3歳になったら幼稚園に移動です。

まとめとして

本来でしたら幼児教育の意義とか云々を語るべきなのでしょうが、とりあえずは保育園との比較における客観事実だけということで。